50日目6回目の公演まで2日間オフとなる。
家が近いお仲間たちは各家に帰っていった。
午前中、居残り組みの一人=パパゲーナ役のVが突然部屋に来て『さちこぉ~ このアリアのアレンジの部分をYou Tubeのこの演奏を聴いて、聴き取って楽譜におこしてくれない?さちこは絶対音感があるから出来るでしょ?』と、頼んできた。
日本では、音楽家で絶対音感のある人は結構いるので、そんなに珍しいことではないけれど、ドイツでは、絶対音感のある音楽家はほとんどいないので、私が絶対音感があることをいつもすごく驚かれる。
とりあえず、You Tubeで聴いてみると、古楽器による演奏で歌っているアリアだったので、絶対音感の私が聴くと、ほぼ半音低く聴こえるので、結局実際聴こえている音を半音高くして楽譜におこすという、私にとって面倒な作業だったが、やってあげた。
夜、ノルトハウゼンに出かけていたVがホテルに帰ってきて、再び私のところに来て、『さちこぉ~いまから私の部屋で飲まない?』と誘われ、同じく居残り組のTと、Vの友人で歌劇場職員のJの4人で飲んだ。
私以外の3人は結構飲んでいたが、私は少しだけにしておいた。
でも、TやVの愉快な話が聞けて楽しかった。

筋肉モリモリマッチョの弁者役のTと、顔は少々怖いがとってもやさしい僧侶2役のJ
51日目オフ日2日目。
暑い・・・・
とにかく3回目の公演からずっと毎日30度を超える暑さで、かなりバテる。
溜まっていたメールの返信や雑用を済ませて、遅めのお昼ご飯の後、なんとなくベットに転がったらそのまま3時間くらい寝てしまった・・・・・
かなり疲れているかも。
おかげで夜中になってもぜんぜん眠れそうにない・・・・
52日目6回目の公演。
この日だけ、なぜか水曜日という普段の日の公演で、この6回目公演以外は全てチケットは完売していたが、唯一この公演だけは3分の2しか席が埋まっていなかった。
更に、この日はワールドカップサッカーのドイツ対スペイン戦、それも決勝進出をかけた試合だったので、ドイツ人にとっては、とっても大事な試合ということで、なんとも間が悪いタイミングでの公演日だった。
オペラ出演者やオーケストラ、裏方さんたちだって、殆どがドイツ人なので、本当はサッカーが観たいと口々に言い、楽屋の上の部屋にテレビを持ち込み、出番の合間に観戦する始末。
もちろん私は、一度も観戦などせず、いつもどおり集中して公演に挑んだ。

声だしの部屋にて
しかし、どうもこの日は体がうまく使えず、声も重い感じだった。
公演も6回目、それに連日30度を超える暑い日が続き、疲労もかなり溜まっていたので、やっぱり私も人間なので、いくら体調を整えて、集中して歌っても、体は正直だなぁと思った。

いつもかわいい3人の童子くんたちとパミーナ役のS・パパゲーナ役のF
ドイツ在住のギタリストのNちゃんが友人5人を連れてこの公演を観に来てくれていたので、公演後急いで着替えて、Nちゃんたちに会いに行った。
すでに夜の11時半が過ぎていたので、あまり長くは話せなかったが、久々に会えて嬉しかった。
Nちゃんと別れてホテルに戻ろうとしたら、演出助手のJやザラストロ役のA、合唱員の方などがお城の出入り口で集まっていた。
なんとドイツがスペインに負けたので、この町の不良(?)たちが覆面をして無差別に通りすがりの人に暴力をふるったりして暴れて、オペラ関係者の一人がボコボコにやられたらしい。
なので一人でホテルに帰るのは危ないと言われ、合唱の方達とタクシーで帰ることに・・・・
しかし待てど暮らせどタクシーが来ず、しまいにはその不良たちが現れ、みんなで急いで逃げる始末。
別のタクシーに電話して、やっとタクシーが来て乗ることが出来、無事ホテルに到着。
恐ろしかった・・・・
53日目再びオフ日。
気温36度。
ありえない!!!
外に出るには暑すぎるので、でも部屋の中も暑いが、あと2公演でベルリンに帰るので少しずつ荷造りを始めた。
ひょえ~ 荷物が来たときよりも多くなってる!
大変だ。
54日目7回目の公演。
暑さと公演の連続で、もちろん疲労はピークだけれど、6回目の公演での教訓(?)を生かして、あとちょっと初心に戻ろうと思い、歌い方を少し変えてみた。
すると、信じられないくらい楽に声を響かすことができた。
あぁ、もっと早くこのやり方で歌っとけばよかったぁなんて思いつつ、これもまた経験だぁ。
いつも夜の女王のアリア2曲歌うたびに、共演者やオケの方など『よかったよ~』って声をかけてくれるのだが、この日はいつも声をかけてくれる方々からは『今日は特によかったよ~』と言われ、いつもは何も言わない合唱の方達からも『よかったよ~』と声をかけてもらい、やっぱりこの歌い方がいいのだと確信した。

夜の女王登場のシーン タミーノ王子役=M

パミーナ役のSと 親子でツーショット(笑)
55日目ついに8回目の公演。つまり最終公演。
ベルリンからオット、そしてフランクフルトからピアニストのNちゃんと旦那様のMが観に来てくれた。
オットが観ていると思うと、緊張してしまう私。
7回目の公演で習得したやり方で歌えば大丈夫と自分で自分に言い聞かせながら(?)、夜の女王の登場のアリア。
っていうか、もう夜の20時半なのに36度って暑すぎる!!!!
スポットライトと熱気とこの気温で頭がぼぉ~となった・・・・
こんな日の野外ステージはつらい。

夜の女王登場のアリアのシーン

最終公演日なので休憩中に、歌劇場専属合唱員で、今回大変お世話になったMと記念撮影
後半、夜の女王の台詞と『復讐の炎は・・・』のアリア。
今日の最終公演でも無事歌い切れれば、8回公演すべて完璧に歌えたことになり、かなりの自信となるし、オットもNちゃんもMもいるし、頑張らねば~ って、気合入れまくり!

『復讐の炎は・・・』のアリアのシーン
無事、歌いきった! けど、う~ん、なんかやっぱり緊張してるのか、昨日ほどは出来なかったかなぁ。
オットやNちゃん&M、昨日の公演を観てほしかったなぁ(爆)・・・・・
最後、今回も夜の女王の私は、無事ザラストロ役のAに殺され、ばたっと倒れ、大合唱で幕!
そして最後のカーテンコール!
パミーナ役のSは、感極まって涙・涙・涙。
みんな互いに抱き合い、労をねぎらった。

お世話になった指揮者のFさん

でっかいザラストロ役のA
急いで着替えて、メイクを落として、オペラ関係者で打ち上げ。
みんな笑顔・笑顔・笑顔!!!
そして飲む飲む(爆)!
Nちゃんとも久々に会えて、色々話が出来て嬉しかった~
Nちゃん&M、わざわざ遠いところ観に来てくれてありがとうでしたぁ。
夜中の2時半、さすがに疲れたので、お仲間達とさようならのハグをして、お先にホテルに帰った。
しかし、この日は熱帯夜!
眠れやしない・・・・
56日目暑さで眠れず、結局8時おき。
荷造りをして、トランク二つ。ひょぉ~
オットどの、すみませんのぉ。
ホテルから駅までタクシーで行き、電車でベルリンへ。
とにかく暑い。
電車の中もクーラーがほとんどきいてなくて暑い暑い。
37度!!!
ドイツで37度はありえないぃ~~
くたくたで夕方、帰宅。
こうして、6週間の稽古+全8回公演をなんとか無事元気に歌い演じきることが出来、今回の経験は私にとって大きな財産となった。
お世話になった方々、愉快なお仲間達に感謝・感謝だ。
この経験を生かして、また次に向かって進んでいこう!
終わり